火傷病(FIRE BLIGHT)

韓国で火傷病が発生したみたいです。

この事実により宿主植物の輸入停止措置が取られています。

海を隔てているとは言え隣国で発生しているので大変心配しています。

 

韓国における火傷病の発生に伴う宿主植物の輸入停止措置について 農林水産省

www.jacom.or.jp

 

 G系台木の話題で火傷病というワードを何度か書きましたが、火傷病とはどのような病気なのか。感染はどのように果樹園内で広がっていくのでしょうか。いくつか読んだ資料の中から、火傷病を理解するのに役立つ、分かり易い図を見つけたので下に参考までに貼りつけておきます。図の出どころはコーネル大学のIPMです。説明の為に僕が便宜的に赤色の数字を追加しました。自分のメモ代わりに記します。興味のある方、下にリンクも張っておきましたのでどうぞご覧ください。

 

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火傷病の感染サイクル。

http://nysipm.cornell.edu/factsheets/treefruit/diseases/fb/fb.pdf

 

火傷病はエルウィニア・アミロボーラ(Erwinia Amylovora)とい細菌が引きおこす病気です。発病すると爆発的に感染が進み、1シーズンで園地が全滅してしまうような非常に深刻な病害です。

 

日本で蔓延する腐らん病(apple valsa canker)も大変深刻な病気ですが、火傷病はその年に咲いた花や、その年に伸長しているフレッシュな枝さえも感染源になり、また昆虫や雨などが感染拡大に大きく寄与していて、他の病害と比べその破壊力は桁違いにみえます。

 

上の図を順を追ってみていきます。

 

まず①。季節は春。

前年にできた病斑部(キャンカー)の縁から細菌を含むネバネバした樹液状の物質が分泌されて、それに蜂などの昆虫が触れる所から話がはじまります。

 

蜂はそのネバネバ物質を身体につけてブンブン飛行。お花を見つけると、いつものように着陸して蜜や花粉を探し、お花の上で忙しく動き回ります。この時、蜂の身体に付着していた火傷病の細菌を含むネバネバ物質が、おしべの先端に付着。

 

 付着したバクテリアはそこでどんどん増殖。18.3℃(65℉)以上になると増殖も活発化。気温上昇に伴い、蜂の訪花活動も盛んになりますから、花から花へとどんどん細菌は運ばれて拡散して行きます。

 

次は②

そこら中の花に細菌が運ばれた状態で、次に雨が降ってきます。雨が降ることで、おしべの先端にある細菌が花の中に流され落ちます。これで感染となるようです。感染して1~2週間で花は枯れます。この枯れた花がまた更なる感染源となり、蜂や雨によって、今度は新しく伸びている枝へと感染が拡大していきます。枝への感染は、虫による食害、降雹、風によるスレ等によって出来た葉や枝の傷口から細菌が侵入し感染に至るようです。

 

次に➂~④

 枝から枝への感染が拡大していくステップです。これから伸び行く、まだ柔らかい枝に被害が拡大していきます。細菌も木質化している硬いところは後回しで、まず若くて弱いところを狙ってくるあたりに、情け容赦ない、イキやすいところからいったるみたいな、なんとも罪深さを感じるのであります。まぁ細菌とはそういうもんですかね。

 

次に④~⑤、④~⑥

このステップはりんごの台木がやられてしまうところです。

 ⑤は発病した枝をもつ木に雨が降ると、細菌が木の下に流され落ち、ひこばえから台木に感染するパターンです。しかし大部分の台木への感染はこの様ではなく、⑥にある樹体組織の中を細菌が移動し、台木部分まで到達して感染してしまうパターンの様です。

 

 つまり、台木が火傷病に対して抵抗性をもたなければ、樹体の土台をやられてしまいます。要は首を絞めらるような状況ですので、リンゴの木はひとたまりもありません。

 

 ちなみに、下の図は、世界各国で使われている代表的なリンゴの台木の火傷病に対する抵抗性を示しています。

 

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 New apple rootstocks from Vineland and Genevaから。

 

縦軸が枯死率、横軸は台木の種類です。2品種の試験結果です。

左の図はガラという品種が横軸の各台木に接ぎ木されたもの。右の図はハニークリスプという品種が同様に横軸の各台木に接ぎ木されたものです。

 

やっぱりMシリーズは弱いですね。M26、M9など系統によって多少違いますが、約60~90%以上枯れてしまうのですね。日本産の台木であるJM7は抵抗性をしめしています!うちの園地でも一部つかっております。おー!

 

ロシアのブタゴフスキー(B9)も強いですね。ブタゴフスキーはM9相当のわい化度をもち、低温に強い台木です。アメリカ、ヨーロッパの2系統がありますが両方とも火傷病に抵抗性がありますね。

 

次に⑦~⑧のステップ。

枝の感染がさらに拡大し、枝の付け根の木の本体にも感染が拡大していきます。

季節が巡って枝の成長が止まってくると、細菌の活動もとまり、感染の拡大はおさまります。細菌は病斑部(キャンカー)をつくって越冬モードになります。

 

感染サイクルはぐるっと回って春に戻りました。

⑧~最初、⑧~⑨のステップ。

 病斑部(キャンカー)で越冬した細菌が再び活動を再開。細菌は、早春、木の表面に出ていって蜂などと仲良くするネバネバ部隊(⑧~最初)と、晩春、木の中の組織を移動し新梢に感染する潜航部隊(⑧~⑨)にわかれます。

潜航部隊の細菌によって枯らされた枝はくるっと曲がる特徴的な形状になるようです。これを「shepherd's crock (羊飼いの杖)」あるいは「candy cane (キャンディの棒)」と呼ぶそうです。この枯れたところからもどんどん感染が広がっていきますので、なんだかもうめちゃくちゃなスピードで病気が広がりますね。

 

 日本には入ってきませんように!!

 大雑把ですが以上です。

 

最重要病害リンゴ火傷病の日米検疫問題 弘前大学

火傷病のまん延を防ぐために 農林水産省