年末と来年とロレッタ。

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道具置き場。余ってた材料など利用してつくってみました。

 

畑を片付け、道具やコンテナを整理整頓して、倉庫の補強をして、あれやこれややっていると気付けばもう今年もあと僅かとなりました。毎年の事ですが、年末になりあと数日で年越しを迎えるこの時期に1年という時の過ぎゆく早さをしみじみ感じてしまいます。一説によると時の過ぎ行く早さは1/年齢になるとか。人生後半戦、果樹栽培に関してはまだまだこれからの気分ですので、健康には気を付けて来年も大いに励みたいと思います。

 

来春に定植予定の苗木の本数を確認して、どこに、どんな仕立てで栽培するかだいたい固まり、定植予定の場所の木の伐採も終了しました。

栽培法や仕立て方は毎年どんどん変化させています。変化させたくて変化させているというより、必要に迫られてやっているというのが正確かもしれません。洋ナシは大きな木が2本ありましたが、収穫も摘果も大変でこれはもうやめようと先月伐採。来年の秋に新たに植え直してダブル・U・エスパリエという樹形に仕立てていきたいと考えています。

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上の写真がダブル・U・エスパリエという樹形です。

 

りんごは以前このブログでも紹介しましたが、苗の段階から2軸の木をつくって定植するバイアキシス苗を来春ある程度まとまった本数定植します。さらにバイアキシスから発展させたワイン用ブドウの様な多軸化の仕立ても、ほんの一部ですがはじめるつもりです。

りんごの剪定に関してはトール・スピンドル仕立てにしているものについては冬季の剪定を完全に廃止し、ロレッタ・システム(6~9月頃までの剪定のみで樹形を仕立てる栽培法)に移行する予定です。

 

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上で述べた洋ナシのダブル・U・エスパリエをつくる際、左右対称の美しい2軸に分岐させる必要があるのですが(上図、stipulary eyeからの2軸化、ロレッタ・システム)、これはたぶんりんごのバイアキシス化に対しても十分うまくいくだろうなぁとおもっています。来年早速トライしてみたいと思います。ダブルの芽接ぎ、接ぎ穂の2芽を利用する方法に並ぶ、3つめ目の方法です。

 

上ですでに何枚か貼り付けましたが、ロレッタシステムの文献は下記で無料公開されています。興味のある方は是非一読してみてください。衝撃的な内容が盛りだくさんです。特にウィングド・ピラミッドという樹形なんか完全に芸術です(下に貼っときました)。

 

Core Historical Literature of Agriculture (CHLA)

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洋ナシのウィングド・ピラミッド樹形。因みにこの樹形、5層構造になっていて完成に7年掛かるそうです!たまらなく面白そう。しかし凄すぎです。

 

イタリアの研究機関が密植栽培とロレッタ・システムを組み合わせようとするのも、まったくもってよく理解できます。ロレッタシステムは100年以上前にフランスでLouis Loretteによって提唱された夏季剪定の技術なのですが、現在の果樹栽培にこそ必要とされる内容だと思います。ロレッタの手法を用いると木の主幹や主枝に近い所、または木の中心部分あたりに沢山の花芽を持たせ続ける事ができます。つまり花芽が木の外に外に逃げていかないようにできる。結果として、たわわに果実をならせたスラッとした木を畑に沢山並べる事ができるので、まさに現在の集約的なりんご栽培の要求に合致した栽培方法そのものと言えます。

前に読んだ文献に少し触れられていたのですが、フランスのりんごの集約的な栽培に”Mur Frutiere(Fruiting Wall)”というのがあります。初夏に機械を使った効率的な剪定を行い、年間の剪定コストを抑え、園地の生産性や果実品質を向上させる栽培法といわれていますが、たぶん、その栽培法のバックグラウンドにはロレッタの夏季剪定の考え方があるのだろうなぁと想像しています。

 

色々試行錯誤したり、勉強するのは単純にうまいりんごを作りたい、そして食べてくださる方に喜んでもらいたいという単純な話なのですが、果樹と言うのは樹高が数メートルになり栽培する場所の景観に与える影響力がとても大きい作物だと思います。

園地を働きやすくして、摘果や草刈や収穫作業といった仕事を効率よくする、それはプロの農家としてはその方向に知恵を働かせるのは当然でしょうけれど、さらにそこに、ロレッタの提案するような樹形のもつ、美しさが兼ね備えられれば、こんなに魅力的な職業(職場)はないのではないかと思います。最近の農業界の動向はいかに攻めるか稼ぐかに力点が置かれていますが(それは当たり前と言えば当たり前ですが)十分な収益が得られることばかりではなく、そこに美しいが加わると、果樹業界全体の魅力に、もしかしたらつながるだろうし、りんごを作って売る以外の交流や、購買とはまた全く別の癒しや、あとなんでしょうか、これまで生産者としては気付かなかったビジネスが色々生まれる可能性だってあるのではないかなと漠然と思っています。こういうエッセンスをビジネスに置き換える能力は自分は持ち合わせていないので、どこやらの感度の良い人が出現してくれればよいのではないかなと期待などもしています。

 

小さく、無駄なく、美しく。

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ダブル・U・エスパリエの樹列。これをまるちゃん農園でも再現してみたいと思います。

 

支離滅裂で少し長くなりましたが、頭の中にあることを少しだけ書かせていただきました。まとめると、本年も大変お世話になりました、の一言となります。笑。

 

来年もご縁があれば是非よろしくお願い致します。

 

それではまた。

 

皆さん、良いお年を。

 

まるちゃん農園 中島誠二