なんとなく安曇野。

赤、黄、緑色の物体を生産しています

   

秋映。

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10月上旬ごろに収穫予定の秋映の様子。

最近は午後から不安定なお天気になることが多いです。

今日も午後から雨が降ったり止んだりしました。雨合羽を着ようとすると雨が上がり、暑くて脱ぐと降り出してくるような感じでした。

ニュージーランドのクリポン(Klipon)

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多軸栽培(Multi-Leader system)のシナノリップ(まるちゃん農園圃場)。各軸のワイヤーへの固定はニュージーランドから取り寄せたアイテムを使っています。

 

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今年の冬、ニュージーランドのKlipon(クリポン)社の樹体固定具を導入しました。実際に使用してまだ日は浅いのですが、とても便利なアイテムだと感じていますので、日本国内の果樹農家さんやその他農業関係者の皆さんにお伝えしたくこの記事をいています。

 もしこの記事を読んでもらって、商品に興味があるという方は、私のオーダーを実現してくれた業者さん(アーテックの中澤さん)にお問い合わせください。

 

 (有)アーテック

TEL 045-982-2810

FAX 045-984-5590

E-mail info@art-tech.co.jp


■クリポン(Klipon)の固定具について。

トレリスにりんごやナシなどの果樹を植えた後に、風などによる木の揺れを防ぐためにワイヤーに木を固定しますが、そのときに役立つアイテムです。

 

固定方法は農家さんによって色々あると思いますが、もしかしたら今回紹介するアイテムをこれまでの方法と組み合わせてもらうと、固定作業の効率があがるかもしれません。

クリポンの固定具は軽量で扱いやすく、コストも安い(と思います)。強度はどの程度耐久性があるのか試験中ですのではっきり言えませんが、耐候性ポリプロピレン、ナイロンを原料としていますので、それなりの強度があるとみています。適切な大きさのものを使えばワイヤーと木の間に適度な空間も確保できますので、芽が擦れてつぶれてしまうことも起こりにくいと思います。固定具として、これまでの方法と組み合わせて、より効率的に農作業ができるのではないかと考えています。

 

固定方法色々。

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巻き付けグリップで固定。

 

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短い巻き付けグリップと紐で固定。紐が動かないように巻き付けグリップに挟み込んでいます。

 

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ストッパーバンド(#18)で固定。東華護謨工業株式会社 ゴムでワイヤーに押さえつけて止めます。

 

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クリポンのフルーツツリータイ(長さ150mm)で固定。

 

クリポン(Klipon)はワイヤーにテンションをかけたり、またはワイヤーに作物や潅水チューブなどを固定するための便利な商品を取り扱っているニュージーランドの会社です。

 


今回、紹介するのはリンゴやナシなどの作物をトレリスなどのワイヤーに固定するためのサイズの異なる4つの商品です。まずは写真をご覧ください。

 

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 ワイヤーに各種装着した固定具。大きさごとに商品名が付いています。

写真左から、

・Trellis Ties (トレリスタイ 長さ100mm)
・GripKlip (グリップクリップ 長さ105mm)
・Fruit Tree Ties (フルーツツリータイ 長さ150mm)
・Tree Ties (ツリータイ 長さ200mm)

 

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ワイヤーに取り付ける前の固定具。アイテムの順番は上の写真と同じ。

 

ちなみに100mmより小さいKiwiklip70㎜はすでに日本国内の農家さんで使用実績があります。Klipon社よりKiwiklipは日本で使用してもらっていると聞いていましたが、なんと近所の農家さんがナシ棚で使用されていることを知り、なんだか世界は狭いなと思いました。今回紹介しているサイズのクリップは日本にはまだ入ってきていなかった様です。

 

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左端(トレリスタイ100㎜)だけワイヤー保持部分の形状が異なる。実際に使ってみるとトレリスタイは他のものと比べると少し保持力が弱いです。一番上のワイヤーに使用し、上部に果実があるような状況では少し風が吹くと外れるか、ズレることが多いです(実験済み)。

 

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各アイテムのパッケージ。

左から、

・Trellis Ties (トレリスタイ 長さ100mm 1000本パック)
・GripKlip (グリップクリップ 長さ105mm 1000本パック)
・Fruit Tree Ties (フルーツツリータイ 長さ150mm 500本パック)
・Tree Ties (ツリータイ 長さ200mm 100本パック)

 

 Tree Ties (ツリータイ 長さ200mm)の着脱の様子。ワイヤ―径2.6㎜。少し力が必要ですがスムーズに使用できます。剪定ハサミ等でひっかけて簡単に取り外すことができます。(2020年9月5日、まるちゃん農園で撮影)

 

商品価格は現在必要数量のみ取り寄せるので、数量や航空運賃等に影響されます。そのため定価を決めることが難しくオープン価格となっています。詳細はアーテックの中澤さんに直接お問い合わせください。

 

■導入の経緯

数年前にVトレリス(Tatura Trellis)の基本的な知識を学ぶため、オーストラリアのBas van den Ende氏の本で勉強していました、その本の中で今回のKliponと同様のワイヤーに木を固定するクリップが紹介されていたのが事の発端です。

 

Vトレリスの教科書のリンクを下に張っておきます。写真が多くてとても読みやすく、すばらしい教科書です。下のサイトで購入できますし、少し読むこともできますよ。

 

Van den Ende氏の記事はGFGなどにも沢山あります(一例を下にリンクしました)。これまでにいくつも記事を読みましたが、とても勉強になりました。この先生もブランチレスの方向なんですよね。複雑な枝の構造をやめて、樹形を簡素化し平面的にして働きやすく生産性の高い畑にしていこうよと主張しています。

 

本の中のアイテムを見た時に、これはとても便利なものだなと思い、自分のリンゴ園でも是非試したみたいと強く思いました。しばらくして某国内商社さんを通じて取り寄せられるか問い合わせたのですが、うまくいかず、そのまま放置となっておりました。

 

しばらくして、今度はお客様として来園頂いていたアーテックの中澤さんとりんご畑の中で色々と世間話をしている時に、話題の一つとして今回のクリップの話をさせてもらいました。こんなのがあったら農家(少なくとも私は)はとても便利なのですよねと。

中澤さんは海外との商取引をお仕事にされていますので、オーストラリアの商品でなくても良いので、同様のものがあれば手に入らないかと相談させてもらいました。それが昨年の11月頃で、早速商品を探してくださり、最初アメリカのインディアナ州にある業者さんのサイトを紹介してくださいました。そのサイトでは面白そうなものが色々紹介されていましたが、その中に今回の固定具もあり、その他とても興味深いアイテムを扱っている業者さんでしたが、残念ながら日本が発送区域外でした。ただよく見るとアイテムの製造元がニュージーランドであることがわかり、今度はそのニュージーランドの製造元(Klipon)に問い合わせる事になりました。


先方にサンプルの発送が可能かなど、やり取りして、年明け1月下旬にKlipon社より今回の商品も含めたサンプルセットが届きました。早速農園のノーマルスピンドル、2軸、多軸等の様々な樹形、樹齢の木に装着し、写真を撮影し、各商品の感想も添えてKlipon社に送りました。

 

その後日本はもとより世界中でコロナ禍となり、3月下旬ニュージーランドにおいても国家非常事態宣言が発令され、約2か月近く商談が進まない状況となりました。

この状況では、しばらく商品は手に入らないだろうなと思っていましたが、5月中旬になり再び話を進めることが可能となり、6月上旬ようやく商品が安曇野のまるちゃん農園に届きました。

 

今回、アーテックの中澤さんのお力で一連のアイテムを手に入れることができました。

心から感謝を申し上げます。

 

 ■使用感など

 4種類のクリップの使用状況とこれまで使用した感想等記します。参考にしてください。

 ※4つの固定具は2.5㎜ワイヤー用です。私の園地の鋼線ワイヤーの太さは2.6㎜です。つまり0.1㎜太いため、装着する際に少しだけ力が必要です。しかし0.1㎜太いために、しっかりとワイヤーに装着する事ができます。一番小さいTrellis Ties100mmはワイヤーとの保持部分の作りが簡易なのであまり力をかけずにつけることができます。

 

★トレリスタイ(Trellis Ties) 100mm
ワイヤーにとても装着しやすいです。長さが短い(100㎜)ので、定植直後の苗木の固定用に便利だと思います。ワイヤーの保持部分の形状が他の3つと異なり、少し保持力が弱いです。強度的に一番上のワイヤーでは使用できないと考えておいた方が良いです。定植当年~2年生程度の果実が無いか、少ない樹体には使えると思います。

 

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左がトレリスタイ100㎜、右がグリップクリップ105㎜。グリップクリップの方が保持力が強いです。

 

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今年植えた若木。分かり易い様にワイヤー線は黄色くしておきました。

一番下と2番目のワイヤーにトレリスタイ100㎜を使っています。下の写真は一番下のワイヤーの固定部分の様子です。

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トレリスタイ100㎜を使用。軸をワイヤーに押さえつけずに適度な間隔が空いていて良い感じです。

★グリップクリップ(GlipKlip) 105mm とフルーツツリータイ(Fruit Tree Ties)150mm


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4本ワイヤー。ふじ/M9。Bi-axis。定植6年目。

一番下のワイヤーはフルーツツリータイ150㎜を使用。上2本はグリップクリップ105㎜を使用。一番上は果実の沢山なっているところは巻き付けグリップで固定、沢山なっていないところはグリップクリップで固定。

 

下は固定部の拡大写真。

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一番下のワイヤー固定部。フルーツツリータイ150㎜を使用。クリップと木の間にはまだ十分な空間がありますね。

樹勢や台木にもよりますが2軸の樹形では10年程度は使用できる大きさではないかと思っています。多軸栽培で樹勢分割する場合はこのクリップサイズ以上太くなるまでには軸の更新をしている可能性もあるので、多軸栽培を行う場合はもしかしたらこの150㎜があれば十分かもしれません。

 

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下から2番目の固定部分。グリップクリップ105㎜を使用。軸とクリップの間に適度な間隔がありますが、あと数年以内には軸も太り、空間が無くなってしまうでしょうから、最初からもうひとサイズ大きい、フルーツツリータイ150㎜でも良いかもしれません。しかし最初からクリップが大きすぎると風で動いてしまう可能性もあるので適切なサイズで付けるのは原則だと思います。

それでちょっと下のが裏技です。

 

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一番大きいツリータイ200㎜をクルっと巻いて使いました。この使い方はクリポンのカタログには無いのですが少しだけテストしています。

 

★ツリータイ(Tree Ties) 200mm

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ふじ/M9の10年生以上のスピンドルに装着しています。

4本ワイヤー。一番上のワイヤーは巻き付けグリップで固定。そのほかはツリータイ200㎜で固定しています。
今年の2月の段階で4本ワイヤーのすべてに装着しましたが、これまでの強風で一番上のワイヤーのものはずれてしまったので(一番上のワイヤーより上の主幹が70~80センチほどあり、果実もなっている状況ですので無理もありません)、現在一番上のワイヤーは従来の巻き付けグリップになっています。

強風が吹き大きな力がワイヤーを通してトレリス全体に掛かり、列単位の倒壊を招くのであれば、固定は一定の力が掛かった場合には外れて、それぞれ木が倒れてしまった方が良いとする考えもあるかもしれません。そのあたりは各農家さんの考え方ですね。

★その他、
冬の低温化ではクリップの素材が硬化し、つけるのに少し強めの力が必要でした。高温化の条件では冬と比べると、付け易くなります。

既存の方法、道具と上手に組み合わせてもらって、皆さんのより良い果樹栽培の一助になれれば幸いです。